2021年12月に日本経団連は「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」を発表しました。5年前と比べてパワーハラスメントの相談件数が増加したと思う企業割合が44%と最も多い結果となりました(引用:「日本経団連2021年報告書https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/114.pdf)。職場でのハラスメント対策は喫緊の課題となっています。
パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法の通称)は今までは大企業のみ義務付けられていましたが、法改正により2022年4月より中小企業にも義務付けられる事になりました。中小企業にも職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられます。
◆パワーハラスメントの定義とは?
職場において行われる、
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
③ 労働者の就業環境が害される
①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
※ 客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません
◆職場とは?
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。
◆労働者とは?
正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する全ての労働者をいいます。
◆職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置とは?
事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため雇用管理上次の措置を講じなければなりません。事業主が雇用管理上講ずべき措置は以下の通りです。
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知、啓発すること
・行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
③ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係を迅速かつ正確に確認すること
・速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
・事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
・再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
(注1)事実確認ができた場合
(注2) 事実確認ができなかった場合も同様
④ 併せて講ずべき措置
・相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、 その旨労働者に周知すること
(注3) 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
・相談したこと等を理由として解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
◆事業主及び労働者の責務
【事業主の責務】
・職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題(以下「ハラスメント問題」という。)に対する労働者の関心と理解を深めること
・その雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
・事業主自身(法人の場合はその役員)がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
【労働者の責務】
・ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと
・事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること
※ 労働者には取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。
◆最後に
これまで職場におけるセクシュアルハラスメント等の防止措置を講じてきた経験を活かしつつパワーハラスメント防止対策についても必要な措置を講じましょう。また、働く人自身も、上司・同僚・部下をはじめ取引先等仕事をしていく中で関わる人たちをお互いに尊重することで、皆でハラスメントのない職場にしていくことを心がけましょう。
<参考資料>
厚生労働省:「明るい職場応援団」https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
厚生労働省:「ハラスメント関係資料ダウンロード」https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/