『事業所衛生基準規則』はご存じですか?
これは、事務所の適切な労働環境を定めた法令のことです。事務所を有する事業者は、快適な労働環境を実現し従業員の安全と健康を守るため、この規則に従って事務所の環境管理をしなければならないと定められています。
今回は令和3年12月1日の改正、見直しについてお伝えします。
- 労働衛生基準の改正・見直しの主な項目とポイント
<照度>
・常時就業する室における作業面の照度基準が、従来の3区分から2区分に変更されました
・改正前の「精密な作業」と「普通の作業」が、『一般的な事務作業』としてまとめられ、300ルクス以上、「粗な作業」は『付随的な事務作業』として70ルクス以上から150ルクス以上に改正されました
採光や照明の種類や角度によりまぶしさを感じることがあるため、事業者は照度にかかわらず、まぶしさを感じないようにすることが必要です。
<トイレ>
・便所の設置基準が変わり、新たにが法令で位置づけられました
※今回の設置基準の見直しでは、便所を男性用と女性用に区別して設けるという原則を維持しながら、同時に就業する労働者が常時10人以内の場合には、区別することの例外として『独立個室型』の便所を設けることによって足りることになりました。
なお、同時に就業する労働者が常時10人を超える場合は、従前通り男性用と女性用に区別した便所を設置することが義務付けられています。
『独立個室型の便所』には以下の項目が求められます。
・男性用と女性用に区別せず、単独でプライバシーが確保されている
・便所の全方向が壁等で囲まれ、扉を内側から施錠できる構造である
・1個の便房により構成されている
※バリアフリートイレも、上記の要件を満たしていれば独立個室型の便所に該当します。仕切り板または上部や下部に隙間のある壁等によって構成されているトイレは認められません。
<休養室・休養所>
・設置する際の留意点が新たに示されました
常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用する事業者は、休養室または休養所を男性用と女性用に区別して設ける必要があります。これらは病弱者、生理日の女性等が一時的に使用するために設けられるもので、随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はありません。
また、休養室又は休養所では体調不良の労働者が横になって休むことが想定されており、利用者のプライバシーと安全が確保されるよう、設置場所の状況等に応じた配慮が求められます。具体的には、“入口や通路から直視されないように目隠しを設ける”、“関係者以外の出入りを制限する”、“緊急時に安全に対応できる”等です。
<温度>
事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の、労働者が常時就業する室の気温の努力目標値が「17度以上28度以下」から『18度以上28度以下』に改正されました。
<一酸化炭素・二酸化炭素の測定>
検知管方式と同等以上の性能を有する測定器として、以下の方法を用いる測定器が含まれることが明示されました。
・一酸化炭素:定電位電解放
・二酸化炭素:非分散型赤外線吸収法(NDIR)
<救急用具>
・常備品目の規定が削除されました
各事業所において想定される労働災害等に応じて、衛生管理委員会等で検討をおこない、応急手当てに必要なものを備えてください。応急手当の際の感染予防具(マスク・ビニール手袋・手指洗浄薬等)も用意しておくと良いです。
このような内容は、衛生管理者や産業医の巡視の際にも確認をし、衛生委員会でも運用決定・状況把握をしておく必要があります。また、労働者の多様化に伴い、働きやすい環境整備への関心が高まっています。是非この機会に、改正点を確認していただき、現在の職場で衛生基準が守られているか確認してみましょう。
産業医は作業環境管理についてもアドバイスを行っておりますので、お困りのことがありましたらご相談ください。
参考・引用サイト
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署:「ご存じですか?職場における労働衛生基準が変わりました」
https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/04kaiseijimushokijun.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000857961.pdf
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課:「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の改正に係る質疑応答集」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000860575.pdf
参考文献
岡庭豊他,職場の健康がみえる 産業保健の基礎と健康経営第1版,2019,pp.124-133